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2015-12-16
資産を同族会社に低額譲渡した場合の個人の課税関係
個人が法人に資産を譲渡した場合、個人の課税関係はどのように考えたらよいでしょうか?ここでは、典型的な例として、資産を同族会社に低額譲渡した場合の個人の課税関係について考えてみることにします。
実は2つの側面から考える必要があります。一つは①譲渡者に対するみなし譲渡所得課税、もう一つは②譲受法人の個人株主に対する贈与税課税が問題となります。
- ①譲渡者に対するみなし譲渡所得課税
- 低額譲渡をした個人については、いわゆる「みなし譲渡所得課税」(所得税法59条)の適用について検討が必要となります。「みなし譲渡所得課税」とは、居住者である個人が法人に対し譲渡所得の基因となる資産を時価に比し「著しく低い価額(時価の2分の1未満)」の対価で譲渡した場合には、譲渡時の時価で譲渡したものとみなす、という取り扱いのことです。上場株式等時価がはっきりしている資産は著しく低い価額がどうかの判定は容易なのですが、ほとんどの資産は時価が明確ではないためしばしば時価の取扱いが問題となります。個人が同族会社に対して「著しく低い価額」で譲渡した場合は、時価で譲渡したものとして取り扱われ、時価と譲渡価額の差額についてみなし譲渡所得課税が課されます。
- ②譲受法人の個人株主に対するみなし贈与税課税
- 相続税法基本通達9-2で、同族会社の株式の価額が「会社に対し時価より著しく低い価額の対価で財産の譲渡をした」ことにより増加した場合には、株主がその増加部分に相当する金額を財産の譲渡者から贈与により取得した旨の取扱いをおいています。これは、時価の高い資産を著しく低額で同族会社に譲渡をすれば、同族会社の株主が労せずして間接的に会社の純資産の増加を通じ利益を得ることになるので、資産を譲渡した株主から同族会社の株主に贈与をしたものとして取り扱われるものです。
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身内の同族会社に資産を譲渡する場合は、上記の問題を考えながら時価について留意しておく必要があります。
※ 2015年9月15日作成
※ 作成日現在の法令にもとづき作成しています。